はじめに
この記事では、ハーバード大学の教授で幸福について研究する社会科学者、アーサー・C・ブルックス氏の著書『From Strength to Strength』に基づいて、人生とキャリアの後半を豊かに過ごすための戦略を紹介します。この本は、キャリアのパフォーマンスの低下を迎えた人々が充実感と目的を持って人生を送るためのガイドです。特に、仕事の成果が落ちてきたと感じる人や、人生の後半をどう過ごすか悩んでいる人にとって、有益なアドバイスが詰まっています。
結論から記載すると
・「実践者」から「指導者」への移り変わりを意識する
・友情関係・つながりの重要性について理解する
・仕事以外の趣味・興味を追求する
キャリアのパフォーマンス低下を理解する
避けられないパフォーマンスの低下
ブルックス氏の本の中心テーマの一つは、誰もが避けられないキャリアのパフォーマンス低下です。研究によると、ほとんどの人は30代後半から50代前半にかけて仕事のパフォーマンスが低下し始めます。この現象は、アスリートやアーティスト、科学者、政治家など、さまざまな職業に共通しています。
パフォーマンス低下の理由
この低下の理由は多岐にわたりますが、主な理由は下記の通り。
- 認知力と体力の衰え:年齢とともに、精神的および身体的な能力が低下します。
- 競争の激化:若い世代は新しいエネルギーやアイデア、最新のスキルを持ち込むため、競争が激しくなります。
- 優先順位の変化:時間が経つにつれて、家庭や健康、個人的な興味が仕事よりも優先されるようになります。
この低下が自然なものであることを理解することで、フラストレーションや無力感を和らげ、より適切に人生とキャリアを再構築するための積極的なアプローチが取れるようになります。
「もっと、もっと、もっと」の罠
ブルックス氏は、若い頃に成功した人が陥りがちな「もっと、もっと、もっと」症候群についても詳しく述べています。この症候群に陥ると、パフォーマンスが低下してもなお過剰に働き続け、さらなる認識や成功を求めてしまいます。しかし、このアプローチは持続不可能で、燃え尽き症候群や不満を引き起こすことが多いです。
この症候群を克服する方法
この罠から抜け出すための方法として、ブルックス氏は次のことを提案しています。
- 受け入れること:「能力の低下」を自然なものとして受け入れる。
- 優先順位の再評価:「職業上の成果」ではなく、「個人的な充実感」を重視する。
- 新しい目標の設定:現在の能力や興味に合った現実的な目標を設定する。
実践者から指導者へ移行する
ブルックス氏は、「実践者」から「指導者」への移行を強く勧めています。このシフトにより、ピークを迎えたキャリアから得た知識と経験を活かしつつ、無理なく他者をサポートする役割を果たすことができます。
メンターシップというものの良さを理解していく
- 継続的な関与:教えることで自分の分野に関与し続け、尊敬される存在であり続けることができます。
- 満足感:他者の成功を支援することで得られる深い満足感。
- 持続可能な関与:高負荷の実務から離れ、より持続可能な形での関与が可能になります。
「自分が実践する」⇒「他者を導く」ということに移り変わる方法
- 機会を探す:現在の組織や業界内でメンターシップの機会を探す。
- スキルの開発:コーチングや教育、コミュニケーションのスキルを磨く。
- ネットワークを築く:若手のプロフェッショナルとのつながりを築く。
個人的な人間関係の構築
ブルックス氏は、職場外での人間関係を築くことの重要性を強調しています。これは、人生の後半を充実させるための鍵となります。
友情の重要性
研究によると、親しい友人が多いことが幸福感や長寿に大きく寄与します。友情は感情的な支えを提供し、孤独感を軽減し、帰属感を高めます。
友情の築き方と維持の方法
- 時間を投資する:社会的な活動や交流に優先的に時間を割く。
- 再接続する:旧友や同僚との関係を再び結束して連絡を取ってみる。
- 脆弱性を見せる:個人的な悩みや弱さを共有し、より深い関係を築く。
趣味と興味を追求する
仕事以外の趣味や興味に時間を費やすことは、喜びと目的を保つために不可欠です。
趣味のメリット
- 精神的刺激:趣味は精神的な活力を提供し、創造性を刺激します。
- ストレス解消:園芸や絵画、スポーツなどの活動は、ストレスを大幅に軽減します。
- 社交の機会:多くの趣味は社会的な交流を伴い、新しい友人を作る機会を提供します。
趣味の見つけ方
- 興味を探る:さまざまな活動を試して、喜びと満足を感じるものを見つける。
- グループに参加する:趣味に関連するクラブやグループに参加する。
- 定期的に取り組む:趣味を生活の一部として継続的に取り入れる。
まとめ
アーサー・C・ブルックス氏の『From Strength to Strength』は、人生とキャリアの後半をどのように豊かに過ごすかについての貴重な道しるべを提供しています。キャリアのパフォーマンス低下を理解し、「もっと、もっと、もっと」の罠を避けていくのが重要なんですね。
個人的には
・「実践者」から「指導者」への移り変わり
・友情関係の重要性
・仕事以外の趣味/興味を追求する
について、人生の後半を充実にしていくエッセンスが詰まっているなと感じました。若い皆さんにはまだぴんと来ない方もいらっしゃるかもしれませんが、是非頭の片隅に入れて頂ければと思います!