情報伝達の基本・ニューロンの働きについて
脳は、ほかの体内環境と隔絶している特殊な環境にある。
ニューロンが発生する電気的な活動によって、速くて精密な情報伝達がおこなわれる。
電気信号は、シナプスにおいて神経伝達物質に置き換わり、情報の「質」が変化する。
シナプス伝達の効率の変化が、記憶や学習の基盤になっている。
脳の健康を保つためには、余分な神経伝達物質をシナプス間隙から素早く取り除くことも重要
見えない脳の働きを視る方法
脳研究は、脳障害の記述、電気生理学、顕微鏡技術が互いに影響をおよぼし合って発展してきた。
病気の脳を調べることで、健康な脳のはたらきがわかってきた。20世紀は、「電気生理学黄金時代」とも言え、ニューロンのはたらきに注目が集まっていた。
脳の隙間から「気分」を決める?!
細胞と細胞のすきまである間質が、重要なはたらきを持つ「器官」として認識されつつある 。
脳の間質は「細胞外スペース」と呼ばれ、〝神経科学最後のフロンティア〟と言われている 。細胞外スペースの体積は、睡眠や覚醒など脳の状態によって増減している。
細胞外スペースは、何もない空間ではなく、間質液で満たされており、脳内物質の通り道になっている 。
神経修飾物質は細胞外スペースを拡散して伝わり、脳の広範囲を調節することで、こころのはたらきに関与している。
脳の流れる「聖水」が掃除をしている?
脳を浸している脳脊髄液は、常に流れて入れ替わることで脳の環境を一定に保っている。
脳脊髄液は、間質液と交換することで脳のリンパ排泄のようなはたらきを担っている。
脳は睡眠中に、脳脊髄液の流れを利用して脳の中を洗浄していると 可能性が示唆されている。脳脊髄液の流れが異常になることと、アルツハイマー病のような脳の病気との関連が注目されている。
脳脊髄液の流れを利用して、脳梗塞後の間質液のイオンバランスを元に戻すための治療法が提案されている。
頭が良い?!ということはどういうことか?
知性の進化の謎を解く鍵は、アストロサイトにあるのかもしれない。
進化的に複雑な脳を持つ動物ほど、ニューロンに対するアストロサイトの比が高い傾向にあり、 マウスとヒトではアストロサイトの大きさも複雑さも形態もまったく異なる。
アストロサイトは、シナプス伝達の効率を変化させることで脳の情報処理に関与しているかもしれない。アストロサイトは、ノルアドレナリンの作用を通じて、心理機能や精神機能、記憶の定着などにも関与しているかもしれない。